街角のコミュニケーション

世の中コミュニケーションだらけ。

平日の映画鑑賞

8月のとある平日。出社しても特にやる事がなさそうだったので、有給休暇をとって映画を観に行くことにした。たまにやる。平日昼間の映画館が大好きだ。人が少ないのがいい。他の観客は少なければ少ないほどいい。だから、この日も敢えて朝イチの上映を目がけて行くことにする。映画に限ったことではないが、平日の昼間から遊ぶのは格別である。

 

案の定、映画館は空いていた。私がよく行く映画館はいわゆるシネコンで、複数のタイトルが上映されている複合映画館である。同時刻に上映される他の映画にもそれほど観客は集まっていない。施設そのものが閑散としていた。さすが朝イチだ。

 

上映開始時刻の20分前に開場となり、私は着席し、くつろいでいた。周りには、わたしの右隣、三つ向こうの席に30代と思しき男性が一人、前列中央にいかにも客筋のいい二人連れのマダムがいるだけだ。少しでも観やすい席を確保しようとするのは観賞者の常である。スクリーンに向かって中段真ん中の席はそれだけ競争率も高い。にもかかわらず、この人口密度。すかすかな状態。実にいい。

 

配給会社からのお知らせと、映画の予告がはじまり、私は本編のはじまりを待っていた。本編がはじまる前のこの時間も好きだ。次に観賞する映画を物色することができるから。というか、編集が上手だよね。どれもこれも面白そうにみえる。興行的にも貢献していると思うし、本篇がはじまる前に観客をスクリーンに集中させる効果もあるのだろう。

 

私もいい感じで集中し、本編の上映を待っていた。すると徐に入口の扉が開き4、5人の集団が劇場に入ってくるのが見えた。中学生だ。そう、いまは夏休み。中学生が映画を観にきてもおかしくはない。だが朝イチからは計算外だった。健全な中学生だったら、まだ寝てる時間じゃないのか?夏休みって夜更かしするもんだろ。しかも野郎ばかりだ。一気に気持ちがざわつく。

 

「こっちに来るな」と、全力の念を送る。しかし私の念も虚しく、中学生たちは後列、私の真後ろに陣取った。「もう、最悪」中学生はうるさかった。ひっきりなしにポップコーンを貪り、ドリンクを啜り、よく喋った。それは、本編がはじまっても止むことはなかった。ポップコーンとドリンクはまだ許せる。守られるお前らの権利だ。映画館が推奨しているのだから、文句のつけようがない。ただ、おしゃべりだけは、ガマンならない。

 

まったく映画に集中できやしない。本編がはじまって10分ほどが経過した頃、中学生のおしゃべりが一段とエスカレートしたそのとき、私は振り向きざまに「お前ら、調子こいて喋ってんじゃねーぞ」とやさしく叱った。言い方!まあ、咄嗟に出たコトバなんでしょうがない。おかしかったのは、同じ列に座っていた30代の男性が「お前らうるさいんだよ」と私のコトバに被せてきたことだ。あっ、ぜったい、乗っかってきたよね、キミ。

 

その後、中学生たちは大人しくなり、ほとんど喋ることはなかった。ちょっと待てよ。言い過ぎたかな。もしかしたら、いい子たちなのかもしれない。友だちどうしで、はしゃいじゃったのかな。夏休みに、野郎仲間と朝イチに映画を観に行く。私にはない発想だけど、これを世間では微笑ましいというのではないか?ヤバい、余計気になって映画に集中できない。

 

そんなこんなで、映画は終了した。エンドロールがはじまると中学生たちはそそくさと劇場を出ていった。「嫌な気持ちにさせてしまったかな」エンドロールが終わり、劇場が明るくなる。私は中学生たちの座っていた席を見た。そこにはドロドロに汚れたシートと床があった。ぶちまけられたドリンクとポップコーン。容器もそのまま放置されていた。

 

「くそガキが!」一瞬でもお前らに同情したのが胸くそ悪いわ。今の若い奴は・・・なんて、言える立場ではない。私もさんざん言われてきたから。ただ、最低限守らなきゃいけないモラルとかルールとか、暗黙の了解みたいなものは確かにあったんだ。若い奴らだけじゃない。今はじじいもおかしくなってる。そういう自分も含めてね。最近、怒りすぎだわ。世代の問題ではない、時代の問題なんだね、きっと。