街角のコミュニケーション

世の中コミュニケーションだらけ。

既視感あるね、は悪魔の言葉

「この企画、既視感があるよね」。私たちの世界では打合せの時など、頻繁に使われる言葉である。“デジャブ”という意味もあるが、この場合は、過去に似たようなものを見たことがあるという意味で、転じて「真似をしている」なんて、否定的に使われることが多い。クライアントをはじめ、実にさまざまな立場の人がこれ見よがしに口にしている。私はこれを聞く度にイラッとする。「既視感のなにが悪い」と思うのだ。だいたいこの世に存在する多くのものは、既存の何かを模倣したものだと言っていいだろう。既製品をヒントにしながら生まれてきたものだ。見たことがある、という感覚は、当たり前なのである。確かに度を超えて模倣されているものは、“パクり”と叩かれてもしょうがないけれど、“既視感”で語られているものについては、概ね問題ないと私は思っている。見たことのない駄作なら、見たことのある良作のほうがいいに決まっている。「既視感あるよね」は、ネガティブチェックにもなってない、そいつがただ何となく言ってみたいだけの言葉なのだ。議論を発展させるどころか、言われた人びとのモチベーションを一瞬で萎えさせる悪魔の言葉なのだ。