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映画『万引き家族』のレビューをみて感じたこと。

映画『万引き家族』を観た。

あくまでも個人的な感想であり、ネタバレもほぼありません。

言わずもがな、今年度カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した

是枝裕和監督の最新作である。

映画というよりかは、ドキュメンタリー映像を観ているようで

かといって、映画としてのディテールを放棄しているわけではなく

緊張感を保ちながらエンターテインメント作品として楽しめた。

自然であり等身大。これこそ是枝演出の真骨頂といったところではないだろうか。

演じきった役者陣はみな素晴らしかった。

とくに役者デビューして間もない二人の子役は、実にこの作品にハマっていたし

二人の演技は、パルムドール獲得にも大きく貢献したのだろう。

 

この映画については、すでに多くのレビューがアップされているが

その中でちょっと気になるものを見つけた。

それは「リアリティに欠ける」というものだ。

「だって映画なんだからさぁ」と思うのと同時に

こういうレビューあげる人は、ちょっと視点が違っているような気がするのだ・・・。

 

この映画は『万引き家族』というタイトルにあるように

「家族」がテーマであって「貧困」や「虐待」がテーマではない。

一見キーワードに思える「万引き」も劇中の家族の性格を

粒立たせるためのプロットの一つに過ぎない。

これを見誤ると「悲惨さが嘘くさい」だの「貧しさに現実味がない」

というレビューになってしまう。

世の中には、先日の「目黒虐待事件」のように悲惨で、貧しい家族の

事例なんて山ほどあるわけで、リアルを超える描写などあり得ない。

この映画を観るならそれを織り込み済みで観るべきである。

 

この映画は悲惨と貧困をドラマチックに描いて

共感を得ようなんて最初から期待はしていないのだ。

期待しているのは、観客一人ひとりが自分の中にある「家族像」と劇中の家族を

照らし合わせることだ。

そうして、戸籍とか法律とか常識を超えたところで

「これは家族ですか」「これでも家族ですか」「これではどうですか」

という具合にストーリーの展開ごとに問題定義してくる。

是枝作品らしく、そこに答えはない。

答えは観客一人ひとりが導き出さなければならない。

狙いは、すごくシンプルなのだと思う。

製作者が意図していないことを指摘している方こそリアリティがない。


最後に、『万引き家族』を是枝監督の別作品『誰も知らない』と

比較している人もいるが、比べているところはやっぱりリアリティと

貧しさと悲惨さの描写についてである。

本来この二つの映画はテーマがまったく違うので、比べること自体がナンセンスだと思う。

もちろん、単純に「好き嫌い」では比べられるのだけれど・・・。

いずれにせよ、どちらも良い映画であることに変わりはない。

だから、私はどちらも「好き」である。


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