街角のコミュニケーション

世の中コミュニケーションだらけ。

パンチを欲しがるブランドコンサルタント

先日、クライアントとの打ち合わせの場で、 ブランドコンサルタントと会った。その打ち合わせは、 クライアントの新事業の立ち上げに伴うブランド開発をテーマにし たもので、 私の会社はいくつかのコンテンツ制作を請け負っている。 ブランドコンサルタントは見た目30代後半〜40代半ばの女性だ 。(後で調べたら43歳だった)率直に言って“冴えない人” が第一印象である。精いっぱい小ぎれいにしているが、 だいぶくたびれたネイビーのニットスーツ、 型落ちのショルダーバッグ、膨らんだ目の下の涙袋や、 深く刻まれたほうれい線が彼女の冴えなさと、 うさん臭さを際立たせていた。よくもまあ、 こんな奴に自社のブランディングを任せたものだ。極めつけは、 名刺に記されている、 こいつが代表取締役をつとめる会社名がダサすぎる。 ネーミングも、ロゴ化されたデザインも超絶にダサい。私は過去にも、 この手のコンサルタントと何度か仕事をしたことがあるが、 概して大嫌いな人種である。 とにかく自分を売り込むことに躍起で、あらゆるSNSを駆使しな がら薄っぺらいブランド論とゴミみたいなキャリアをひけらかす。 多少のマーケティングとクリエイティブをかじっただけで、 いかにも知っている風を装う。最悪なのは手八丁、 口八丁には長けていて、 クライアントのキーパーソンに取り入るスキルはずば抜けている。 あぁ、大嫌いだ。そんな先入観もあって、 今回の打ち合わせにブランドコンサルタントが同席すると知らされ たときから、もう嫌な予感しかしない。「 ぜったいにグチャグチャにされる」 それしか想像できないのである。こいつには、 もっと上流の部分の整理をきちんとしてほしいのだが「 私のロジックを反映させるわ」 と言わんばかりにアウトプットにも、 生臭い小便ブランド論をまき散らす。残念なことに、 この予感は見事に的中することになる。

 

彼女は当たり前のように長いテーブルの向こう側に座った。 つまりクライアント側である。しかも、 キーパーソンである取締役の隣で「 私がこのクライアントのメシアよ」そんな風にもみえる。 この三流コンサルタントが、えらそうに。 気持ワリーからこっち見んなよ。四流表現者の私は、 打ち合わせが始まる前から、心の中でさんざん毒づいていた。 打ち合わせは、私のプレゼンテーションからはじまった。 コンテンツの考え方から、 具体的な表現にいたるまでを一気に説明する。私は、 正面に座っているキーパーソンと、彼の並びに座る部下5、6名を交互 に見ながら、20分程度のプレゼンを行ったが、その間、 女コンサルタントには一瞥もくれてやらなかった。 私がクライアントの反応を待っていると、 女コンサルタントが口火を切った。「ちょっと2、3質問よろしいですか」。これは想定内である。打ち合わせに、 こういう輩が存在するとき、 クライアントの自社社員が会話の口火になることは稀である。 キーパーソンを含め、みんなそれぞれの出方を伺っている。 いかにもサラリーマン的な振る舞い。 そんな状況で、外部の女コンサルタントがこういう切り出し方をするの は、当然のことでもある。私は少し身構えたが、 できるだけの余裕を醸し出しながら女コンサルタントに向き直り、 穏やかな口調で「どうぞ」と言った。「 こちらの資料に書かれている、アプローチのし方と、 コピー案とはどういう意味なのでしょうか」。 女コンサルタントの質問である。私は思った。「こいつど素人だ」。企画書の読み方も、方向性と表現の違いさえも分からない。 このショーモナイ質問をきっかけに打ち合わせが展開していったの だが、 女コンサルタントは終止キーパーソンにおもねった発言を繰り返し ていた。ある意味、感心させられるのは、どんなに薄っぺらで、 スッカスカな中身であろうとも、 こいつは臆面もなく発言していることだ。くだらなさのあまり、 答えに窮しているこちらが素人っぽく見えるではないか。

 

コンサルタント曰く「うーん、 もう少しビジュアルにパンチがほしいですね」。うわー、 久しぶりに聞いたわ、「パンチ」って。「パンチ、ですか」 極めて冷静な物言いとは裏腹に、 私は誰でもいいからこの女コンサルタントの顔面にパンチを入れて ほしいと強く願った。